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荒廃する世界。
相次ぐ戦争。
ある日を境に生まれた念法なる技術が、武器による技術の戦いの根底を変えた。
しかし、それは武器同士の戦い故に牽制せざる得ない状況を打ち消す結果となる。
武器という歯止めの利く、殺傷道具による拮抗は一度使用すれば、歯止めの利かない念法という技術を使用した戦争というより、虐殺へと変わった。
そして、五十年の月日が流れる。
世界は七大戦王と、呼ばれる支配者達によって統治されていた。
だが、統治とは名ばかり。
それは強大なる念術と武力による支配だったのである。
人々は選ばねばならなかった。
支配され、押さえ付けられた中で命を辛うじて繋ぐか、それとも戦王達の支配から逃れ自由を手にする為に流浪人となるかをーー。
そして、そんな絶望に満ちたる世界で、自由の為に命の危険を顧みず、ある男は流浪人となった。
男の名はブリサバ・ソテイル。
別名を無頼剣のブリサバといった。
ブリサバは職と寝床を求め、戦王バノセンの支配する国の都市ムルゾーへと立ち寄ったのである。
しかし長旅の為、路銀も心許ない状態にあった。
やむを得ずブリサバは宿より先に、職業安定所に赴く。
だが、相次ぐ戦争故か僅かな軽作業の仕事が僅かにあるのみで、討伐の仕事は今、請け負えるものがなかった。
後は傭兵募集のみ。
(やれやれ、ここもか。)
しかし、ブリサバには戦王の傀儡として生きる気など、毛頭なかった。
ブリサバは溜め息混じりに、その場を後にして早々、ある場所を目指す。
その場所とは賭博場である。
本来ならば騒ぎが起こりやすい場所なので、なるべく行きたくはないと、ブリサバは思っていたのだが、残り少ない路銀の事を考えればやむを得ない事だった。
ブリサバは堕落した臭いのこびりついた扉に、手をかける。
そして、そこには見慣れた絶望の光景と、堕落に満ちた空気が充満していた。
実に良く見慣れた光景ではあったが、幾つか稀なモノもある。
一つには賭博場には似つかわしくない、飄々としたノリで女を口説いている男。
一見すれば、命知らずとしか思えない行為であったがブリサバは、この男がそんな横暴を可能にする何かを備えている事を、感じとっていた。
間違いなく今、この場で一番揉めたくないのは、この男である。
ブリサバは、その男から自然に目を反らしつつ、もう一つの稀なる光景に目を向けた。
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