新妻の気持ち

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新妻の気持ち

つい昨日、ジョナサン・エルネストの妻になったフランチェスカ・ルバリエ・エルネストは、ベッドで横になっていた。 ここ最近、どうにも軽い微熱が続いていたからだった。 アカデミーでは奇しくも夏休みが始まっていた。 フランチェスカが受け持っていたのは、ジョナサンの受け持っていた生徒より年上のクラスだったが、今年の受け持ちの生徒は出来がよく、留年を心配するようなことはなかった。 このまま行けば、来年は最上級クラスになり、色々忙しくなるだろう。 そう言えば、生徒のカルミナ・フェラータと話している時、急に気分が悪くなったのだった。 トイレに駆け込み、出たあとで、今度は校長に捕まったのだった。 気分はよくなった?フランチェスカ。 そう校長、ルルド・リュミエールは言ったのだった。 「ありがとうございます。もう大丈夫です」 そう言ったフランチェスカを、校長はまだ見つめていた。 「ねえ、フランチェスカ。今月は来た?」 え?何故それを? 「隠さなくていいわよ。貴女生徒じゃないんだし。正直に話してみなさいな」 今度こそ、フランチェスカは何も言えなくなったのだった。 「ハッキリ聞くわよ?父親は、ジョナサンよね?私のいた世界では、デキ婚と言うわ」 ルルド・リュミエール。魔王を引きこもりに追い込んだ魔法使いで、異世界転生した女でもあった。 「確かに、ジョナサン以外とはありません。それに、ほぼ毎日、彼のーー」 「凄い濃いのでタプタプ」 やっぱり、彼は。 生徒時代に女子だけで行われた校長による性教育で、校長のニャンニャンちゃんに入ってたのは、彼のだったのね。 お互いの了承もなく、彼は、睡眠魔法(グレーター・スリーブ)を食らい、昏倒されて校長先生に。 私の手に、そっと本を手渡して、校長先生は言った。 「彼の鼻には誤魔化しは利かないわ。着床しちゃえば必ず気付くわ。英語は読める?ああ古代語だったわね?あの引きーーアライダー・ファーストエビルの本よ。生徒時代にジョナサンと勉強してたものね」 確かに、彼はほぼ古代語をマスターしていて、私にも教えてくれたんだったわ。 教わった同級生はもう1人いたのだが、彼は覚えが悪かった。 「エビルの知識は、多分昔に覚えた性教育の丸コピーよ。まあ童貞だしね。ただ物覚えはいいから、百科事典レベルのテキストから、実用性の高い部分を抜粋、再構成してるから、読み甲斐はあるわよ。妊娠初期は大事な時期よ。安静にしてなさい。おめでとう。フランチェスカ」 ふわりと抱き締められ、思わず少し泣いてしまった。 改めて読み進めると、妊娠初期の禁止事項というのがあって、主に妊娠初期の性交渉は、胎児の育成によくないらしかった。 普通にしちゃってたけど。 更に、乳房をあまり刺激してはいけないとあった。 それもしちゃってるのよねー。彼おっぱい大好きだもの。 生理が止まったのも事実で、式を挙げる前に校医のマリア・コーウェル先生に相談したのだが。 「私の読んだ医学書によると、確かによくはないみたいだわ。妊娠後期で大人数相手にセックスした人は、亡くなったこともあったそうよ。ただ、絶対に駄目とも言いきれないのよ。現に本を読んでない人はいっぱいいるしね。そういう人達は普通に妊娠初期にセックスしている人もいるから。ただ、貴女のお腹に宿った赤ちゃんを、大切にしてあげてね?私は、若い頃、それで」 何となく理解していた。コーウェル先生に起きた悲しみが。 ふと、軽いつわりが来て、フランチェスカはエビルの本をそっと棚にしまった。 確かにつわりが来るのはあまり歓迎出来ない。 妊娠初期の性交渉は控えるというのは理解した。 だが、どうしても、むしろ妊娠してからどうも、そういう欲求は増した気はするのだ。 そういえば、生徒のアリエール・リトバールが執筆した、勇者ジョナサン・エルネストシリーズが、棚に置かれていた。 何じゃあこりゃああああ!俺が!松ぼっくり齧ってる奴とそうなる訳ねえだろうがあああああああ! 確か、彼は本を床に叩き付けたことがあった。 彼は、基本的に本をとても大切に扱うから、床に叩き付けたのは珍しいことでもあった。 捨てといてくれ!そんな馬鹿本! 彼がそう言ったので、フランチェスカは思わず、本のカバーを付け替えたのだった。 神経系魔法の理論と実践。彼が丸暗記していたから、もう読むことはないと思っていた。 今、フランチェスカはこっそり妊娠していて、まだ誰にも告げていなくて、夏休みで1人寝ていて暇で、ムラムラしていて、1人ニャンニャンはしばらくしていなくて。 フェイクカバーされたジョナサンのエロ本に手を伸ばそうとした時、ノックの音がして、慌てて手を引っ込めたのだった。
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