馬車は揺れるよどこまでも

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「全員です。宮廷に住まう全ての諸侯とお考え下さい。ミロードが、花でも手折るような気軽さで公爵様を暗殺なさったからです」 あー。ジョナサンは呻いた。 「本来、まさに難攻不落、誰一人近くこともできないあの状況で、かくのごとくあっさりとお殺りになってしまいました。その行為が持つ意味をお考え下さい。世界最高の稀代の暗殺者を、王陛下の前に台覧するのですよ」 それ言われちゃうと、ちょっとキツイ。 現に銃器の類は全て置いてきた。手荷物検査をされた時、言い訳出来ないからだ。 「現在、宮廷で最も力を持っているのは、中央大陸の三分の一を治めているシトレ侯爵様ですね。その後を追うのは織物産業を一手に支配しているダブリン伯爵様です。他にも子爵男爵、あまたの諸侯が、あなたを取り込み覇権を狙っています。ミロードが公爵様に傅く程度の人間であれば宜しかったのです。今ごろミロードは公爵様の義息となり、華燭の美酒をきこしめしながら、悠々と王家簒奪を夢見て妾と楽しくやっていたでしょう」 あれ?なんかおかしいな。妾?誰が? 「公爵様のご息女、マルガレーテ様は大層な、まさに傾国の美しさと聞いております。マルガレーテ様は現在、公爵様の後ろ盾を失って焦っておられます。
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