馬車は揺れるよどこまでも

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「木版画のカラー原稿を利用して、本を刷ってみた」 「薄い本ではないか!何故私が裸で勇者にこんな格好でひっ繰り返されねばならんのだ!」 「薄い本。その発想頂いた」 「おおおおおおおおい!貴様等ああああああああああああああああ!」 ジョナサンのいない魔王部屋は、こんな有様になっていた。 ジョナサンは、停止した馬車から降り立った。 即座に、御付きの係が駆け寄り、やや過剰な歓待を受けた。 フェルナンド・フェリーチェを名乗る文官の案内で、王城の中を進んでいく。すれ違う下女や貴族の夫人が、ジョナサンの姿に驚いている。 「町雀がしきりにさえずっておりますが、お気になさらず」 「というより、何故私の顔を?」 「ああ。それは、最近出版された挿絵つきの本でございますよ。その本には、色付きのエルネスト卿の尊顔が見事な筆致で描かれているとか」 へー。なんか魔王がやらかしたのか。 「しかし、不思議なことにこの本は女達の間だけで流行しておりまして、男性は未だ鑑賞することはできませんので。運輸局事務次官のリトバール家のご息女の作ではないかと」 やったな。なんかやったなアリエール。三日でこの様かよ。 「実はここだけの話、
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