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そして、私達の身に起きた出来事は、私の昔の恋人の会社が作った、太陽光反射衛星の宣伝に利用され、私の昔の恋人の会社の株価は上がった。
本当は、1週間後に電撃発表を行なう予定だったのだが、小さい会社だけあってフットワークも軽く、試験中のシステムを人命救助に利用した、と云う筋書を瞬く間に書き上げて実行に移したらしい。
私達の命を救ったのは、要は、月軌道上のL4・L5ポイントの反射鏡で太陽光を反射、更に月の裏側上空の軌道に有るもう1つの反射鏡で、月の裏側の任意の地点に、太陽光を送る、と云うシステムだ。
言う程簡単では無いだろう、と思う人が多いだろうが、それを実現する精密な制御には、私の昔の恋人が関わった宇宙空間での衛星測位システムの技術が応用されている。
そして、十数年が過ぎた。
私の命を救った太陽光反射衛星システムは更に改良され、規模が大きくなり、実運用段階に入った。
このシステムで供給される太陽光は、発電に利用されるのみらなず、光ファイバーで地下の基地や居留地に送られ、一般生活用の電灯の代りや、地下での農作物の栽培にも利用されるようになった。
ただ、天文学者たちはカンカンらしい。
せっかく、一定期間以上の「夜」が有る場所として、天体の光学観測に利用しようと思っていた「月の裏側」から、肝心の「夜」が失なわれてしまったのだから。
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