失なわれし夜

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 ここは月の裏側……つまり地球を向いている側の反対側だ。そして、今、月と太陽の間には地球が有る。言うなれば、今の時間帯は「真夜中」だ。  月面に一定数の人々が暮すようになって一〇年以上(まぁ、「月“面”」と言っても、ある程度以上の規模の基地・居留地が有るのは地下だが)。未だに最大の問題は電力だ。  水力・風力は無理。火力は、大量の燃料と酸素を月まで運ばねばならない以上、採算が取れない。核分裂系の原子炉は地球上とは違う環境のせいで問題が山積み。核融合系の原子炉は、まだ、地球上でも実用化したばかりの技術なので、月面で運用するにも、やっぱり山程の問題を1つ1つ解決する必要が有る。  当面は太陽光発電が主流だろうが、問題が2つ。  1つは電力の供給を単一の発電方式に頼るリスク。  もう1つは、ここ月の裏面だ。ここでは、一定期間の「夜」が存在してしまう以上、月の裏面の基地・居留地の規模は太陽光で発電した電力を溜める蓄電池(バッテリー)の性能や容量に依存してしまう。     
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