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裁判の争点にならないであろう最大の謎は、「核分裂系の原子炉」を売り込む為に汚い金をバラ撒いていた連中と、「核融合系の原子炉」の採用を目論んでエラいさん達の秘密口座に何重ものロンダリングを行なった金を送金していた奴等が、両方とも私の勤務先の別の部門の人間だった事……つまり、同じ会社の社員同士が、相手を蹴落そうと今世紀の歴史に残るレベルの収賄工作を行なった点だが、まぁ、デカいだけが取り柄の組織では良く有る事なのだろう。
そして、よりにもよって、そのロクデモない大企業の技術部門の管理職のハシクレである私の脳味噌の中に、汚職事件の裁判の結果を左右する情報が入っており、私は裁判所の証人席へ御案内される羽目になった。
……より正確に言おう。私は自分の良心に従っただけだが、勤務先の連中から見れば、私は紛う事無き「裏切り者」だ。企業や公的機関が行なった不正を内部告発した者に対する法的保護が無かったらしい百数十年前の原始時代であれば、私の勤務先の連中は、かなりエグい報復をした事だろう。
だが、ある事については、自分の勤め先の連中の事を過小評価していたようだ。いや、「過小評価」「過大評価」のどちらかは私自身にも判断が付かない、と云うのが正確な言い方かも知れない。
よもや、奴等が、これほど短絡的な行動を起すとは……。もう少し早く、転職活動を始めて、とっとと地球に戻っておくべきだった、と云う後悔の念が頭を過った。
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