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失なわれし夜
『急に済まないが、私は、もうすぐ死ぬ』
それが、大学の頃から十数年付き合った挙句に、5年ほど前に分れた元恋人からのメッセージの書き出しだった。
書き出し……そう、この御時世にテキストオンリーのメッセージだ。
とは言っても、あいつの勤務地が分れた時と同じなら、回線の容量や速度が限られているので、仕方有るまい。
のっけから不穏なメッセージを読み終った後、あたしはすぐに解決策を思い付いた。
まずは、あいつの乗っている「車」の型式と、それに搭載されている「動力源」、必要な工具などの有無、そしてあいつの今の具体的な居場所を問うメッセージを送り返した。
返信はすぐ来た。
エクセレント!!やはり、あいつの勤務地近辺で最も使われているタイプだった。もし、運命を司る神が存在するなら、あいつを生かしておくつもりらしい。
あたしは、あいつの車を改造する為の手順を調べて、それを書き写して、あいつに送った。
もちろん、最後に、こう書き加えるのを忘れなかった。
『大丈夫。太陽は、あたしが何とかする』
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