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ある帝の代、龍苑寺という寺があった。山の頂にたつその寺は、かつては名を馳せていたが、今は廃寺となっていた。
さて、ここに一人の青年が居る。時節は春。ほのぼのあけゆく空の下、春霜を踏みしめながら山の頂を目指しているようだ。
陽の光が山に触れたとき、青年は頂に着いた。夜霧を遮るためにまとっていた覆いを解き、光の下に現れた姿は隅々まできらきらしく、鳥や虫、木々や草花までが、天に歓喜を伝えた。それは、金色の柱となって天に伸びた。
陽の光に溶けた春霜が葉からするりと落ちるころ、長いこと龍苑寺を眺めていた青年は柔らかく笑んだ。
「これなら、何とか直せそうですね」
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