【1】 お話のはじまり

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 青年の姓は(リン)、名は翠巒(スイラン)。  彼は、天の祝福を受けた人間だった。  何をするでなくただ居るだけで人を癒すこともあれば、卓越した知識と技術で村一つを救うこともあった。  そんな彼がなぜ龍苑寺を訪れたのか、今となっては知る者はない。わかっているのは、彼が龍苑寺で多くの者に学問を教えていたこと。そして、彼の教え子達が後に、「金色(こんじき)の世」と称される時代を作り上げたこと。  大人達は(もっぱ)ら、この話を教訓めかして子供達に聞かせたがったが、子供達が請うのはいつも、もう一つの話だった。  それは、翠巒と龍の話。  龍が翠巒に出逢うところから、この話は始まる。
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