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【2】 寂寥
諸々の命が天へ伸ばした美しき柱は、この日も己の役割を果たさんと飛翔していた龍を強く惹きつけた。そうして柱のもとへやって来た龍の目に、翠巒の姿が映った。
―――――何と美しい人間だろう。
龍は驚いて、その大きな大きな目を、更に大きく見開いた。
様々なものに姿を変えることのできる龍は、かつて、菩薩に命じられて人に姿を変え、下界で暮らしたことがあった。
空から見た人は、豆粒よりも小さい。だが、同じ大きさ、同じ形になった時、龍は、人の中の途方もなく大きな想いに気づいた。歓びだけを胸に、ただ己が役割を果たしていた龍とは違い、人は様々な想いを胸に秘めていた。
龍が寂寥という言葉を知ったのも、この時だったかもしれない。己でもわからない嘖みを抱えたまま空に戻り、下界に降りなくなってから、既に久しい。
そうして目を背けていたのに、翠巒に出逢った途端、龍は下界に強く惹きつけられてしまった。
その日から、龍は毎日龍苑寺の上を飛翔するようになった。
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