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そして11時、手術室に山根が運び込まれた。
黒い病棟の手術室は特殊な造りで、部屋の中にひと回り小さな特殊ガラスの部屋があった。
特殊ガラスの部屋にある機器の車輪には、カバーがかけられている。
出入口はふたつある。
ひとつはドクターやナース向けで足元は10センチほど高くなっており、少し足を上げながら入る必要がある。長方形の長い辺に設置されている。
もうひとつは患者用で、こちらはストレッチャーが入りやすいように下は坂になっている。こちらの出入口は、長方形の短い辺に設置されている。
ふたりは山根を手術室に運ぶと、患者用出入口付近に止めた。
その後足にカバーを付けながら入ると、患者用出入口から山根を特殊ガラスの部屋に入れた。
「面白い構造ねぇ……」
山根はガラスの部屋を見回した。
「えぇ、色々事情がありまして。ではおやすみ」
黒野は山根の返事を聞くことなく、一方的に麻酔をかけた。
「それではこれより、内臓交換手術を始めます。メスを」
「はい」
黒野はメスを受け取った瞬間、目をギラつかせた。
「さぁてさて、どれほど悪性腫瘍が広まってることやら……」
黒野はクツクツ笑いながら山根の身体を切り開いた。悪性腫瘍に侵された内臓が詰まっている。
「ああっ!なんて素晴らしいんだ!悪性腫瘍がこんなにも!あっはっはっはっはっ!!!」
ザクザクザクザク!!!
黒野は目にも止まらぬ速さで、悪性腫瘍がついた内臓を切り離していく。
あまりにも勢いよくそれらが飛ぶので、ガラスの部屋のあちこちに血やら内臓の破片やらがはねてつく。
「先生!患者が死んでしまいます!」
美紀は思わず声を張り上げた。
「時には犠牲もつきものさ!今は楽しもうじゃないか!」
「先生!!!」
黒野の手は止まらない。
自分で器具を取り、自分で切る。
美紀は呆然とそれを見てるしかない。
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