魔法の夏

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「ゆりちゃんね、太郎さんとの文通が楽しかったみたいです。唯一病気を知らずに接してくれる人との世界だったから。高校の時から病気にはかかっていて、親しい友達は皆知っていたみたいなのだけどね。太郎さんはクラスも違ったでしょう。だからSNSもやらない太郎さんだけが、高校時代からの病気を知らないお友達だったのよね。だからわざわざ住所を聞いたみたいなの。住所を聞いた日のこと私まだ覚えてるわ、たろちゃんの住所聞けた!ってゆりちゃんすごく喜んでいたんですよ。」 淡々と進む時間と、カランと音を立てて溶けていく麦茶の氷。麦茶がなくなって、ゆりの母親がおかわりを促したが太郎はそれを丁寧に断った。氷だけになったグラスの中で溶けていくそれは、砂時計にも似ていた。 「ゆりちゃん、魔法使えたんですね。」太郎は荷物をまとめながら少し笑った。 「ふふ、手紙に書いてあったかしら?あの子も言ってたわ、魔法で咲かせちゃったって。いたずらっ子みたいに笑ってたの。でも次の日容体が急に悪くなってね…」     
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