幕開け

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『なあ、暗くないか?』 突然変なことを言われたものだ。 電話の発信者の欄には、俺の親友である速水祐樹(はやみゆうき)の文字。今日は日曜日だが祐樹はサッカー部の部長だ。いつもなら練習があっただろうが、こんな時間に電話をしてくるなんて珍しい。 『電気、つければ?』 1日中カーテンを締め切った部屋でゴロゴロしていた俺は、特に何も確認せずに返事をした。 『そう言うことじゃなくて…今まだ14時だろ?外見たか?』 14時で暗い?何を言っているのだろうか。一応カーテン開け外を覗く。 ーー外は闇に包まれていた。 もう夜中であろう暗さにも関わらず、街灯が一つもついていなかった。それに祐樹は14時と言っていた。それは流石に祐樹の時計が壊れてるんだろうと思い、壁に掛かる時計に目を向けると短針は2の数字を指し、秒針はカチッカチッとリズム良く時を刻んでいた。 携帯の時計を確認しても14時。目覚まし時計や腕時計を見ても2時。 一体どうなってるんだ。 『時計壊れたかな?』 そんな事有り得ないとは思いつつも、そんな風に言ってみる。 『時計が同時に同じ時間を指して壊れる可能性は限りなく低いと思うけど。』 やっぱそうだよな。 いや、納得している場合ではない。 もし本当に14時なのに外は暗闇だとしたらしたらただ事ではないはずだ。『ちょっと待ってて』と電話の向こうに声をかけながら、急いでリモコンを手に取り、テレビの電源を付ける。 すると、俺の焦る気持ちとは裏腹に気が抜けるような呑気な音楽と共に大自然の景色が映る。 どうやら旅番組のようだ。こんな物を見ている暇ではないと、チャンネルを変えようとリモコンのボタンを押そうとしたその時ーー あの不快感のある不協和音、ニュース速報の音と共に画面が切り替わり画面の中のアナウンサーが喋り出す。 「番組の途中ですが、ここで緊急速報です。本日午後2時8分、太陽の活動が突然停止したとNASAが発表しました。 太陽自体の天体は観測できるものの、その活動は完全に停止したとのことです。 道路交通、公共施設、様々な商業施設などでの混乱が予想されますが、冷静に落ち着いて行動してください。 詳しい情報が入り次第お知らせします。 繰り返しお伝えしますーー。」
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