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「あのねーー、太陽が消えちゃったの。私は友達と今日会って生き残るために準備して来たの。それでね、私と友達の4人でシェルターに避難しようって話になってねーー。」
そこまで話してはっと顔を上げる。しまった、何も考えずにつらつらと話してしまった。お母さんはポカンと口を開けて驚いて固まっていた。
「あ、ごめん、こんなに急に話してもわからないよね。ゆっくり話すね。」
「いいのよ。そんなに私に気を使わなくても。」
今度は私が口をポカンと開ける。驚いた。責めてる訳でも怒ってる訳でも無い。悲しい訳でも寂しい訳でも無い。とても優しい表情で、声色で私に語りかける。優しい私のお母さんの顔だった。こんなお母さんはいつぶりだろうか。
「よく分からないけど、分かったわ。行っていいのよ。お母さんの事は大丈夫!お母さんこう見えても料理は上手なのよ。」
自慢げに、楽しそうに喋っている。てっきり、貴方も私を置いていくの?とか言われると思っていた。
「知ってるよ、お母さんが料理上手な事くらい。」
嬉しかった。また昔のお母さんに会えて。声が震えて目から涙が出てきた。
「あらあら、日向美は泣き虫なんだから。」
手を伸ばして涙を拭ってくれる。でも、少し違和感を感じた。こんな風に私をあやすお母さんは私が本当に幼い頃にしか見たこと無いからだ。
ああ、分かった。
「お母さん、私はもう高校生だよ?」
涙を拭ってくれたお母さんの手を握り笑いかける。
「何言っているの?日向美は小学生でしょう?」
やっぱり。本当に分かっていない様子で不思議そうな顔をしている。きっと何らかのきっかけで記憶が何年も前に戻ってしまったのだろう。私の事を認識出来ているだけでいい方だ。
「そう、だったねーー。私、明日から少し出掛けるからね。ごめんね。」
「私なら大丈夫よ。」
「ごめんね、ごめんねーー。」
泣きじゃくりながら謝る私を大丈夫、と慰めてくれるお母さんを見ていると本当に私の気持ちが分かってくれているような気がしてまた涙が出てきてーー。
ごめんね、お母さん。
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