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「俺が守るからーー。」
今思えば子供のくせに随分と大層な事言ってくれてたよな。でも、その時の俺は何言ってるんだよ、と笑いかける事も出来ずに、返事もしないまま固まっていた。
その後すぐに背を向け奏多は病室を去った。
次の日から、いつも通りの奏多だったけど、少しだけ変わった事があった。
日が経つにつれて一人でなんでもこなすようになり、ーー俺をあまり頼らなくなった。
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昔のことを何となく思い出した俺は奏多から車に視線を移し、歩き出す。
「何処行くか知らねぇけど、さっさといこーぜ。」
「あ、ああ。」
不機嫌になった俺に戸惑う奏多に気付かないふりをして俺はくだらない事を考える。
もっと、いや、少しでもいいからさ俺の事ーー、
「頼ってくれたっていいのに。」
誰にも聞こえないように小さく呟いた俺の声は直ぐに消えた。
「そういえばど、何処に行く予定なの?」
狭い車内。いや、決して狭くは無いのだが、後部座席に3人で乗っている状態では狭く感じてしまう。なんで助手席が奏多なのかは謎だけど、何となくこうなっていた。
奏多は頬杖をつき窓の外を眺めて考え事をしているようで黙っていた。
俺は、何となく気まずくて黙っていた。
その気まずさを汲み取ったように俺の隣、真ん中に座る由梨が懸命に喋っていた。
恐らくそれは奏多に向かって言ったのだろうけれど、考え事をしている奏多の耳には届いていなかった。
「あっ、えっとーー。」
「奏多?どうしたの?」
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