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由梨がどうしよう、と言わんばかりの表情で困っていたのを見かねて日向美が奏多に声を掛ける。
ーーが、返事は無い。
「奏多?」
「あ、え?俺か?」
二回目の日向美の呼びかけでようやく気がついた奏多はとんでもなく間抜けな返事だった。俺は話には参加せずに話を聞く。
「そうよ。由梨が話しかけたんだけどーー、やっぱり少し寝ていたら?」
「そうかーー悪い、由梨。眠くは無いから大丈夫だよ。少し考え事をしていただけだから。」
3人とも感じただろう。何かがおかしいと。
起きているのにも関わらず、あれだけ声をかけられないと気づかないのだから。
「なあ、何かあるなら俺達に話してくれよ。」
耐え兼ねた俺は口を挟む。
「いや、寝不足のせいでボーっとしてたみたいだ。悪かった。」
なんだよ、さっきから。イライラする。奏多はなんか考え込んでるし。この空気もうぜーし。
「さっき眠くないって言ってただろ?眠いのか考えてんのかどっちなのか分かんないし、いくらなんでもボーっとし過ぎなんだよ。これからの事だろうがお前の事だろうが俺達の事だろうが、悩んでんなら言ってくれよ!そんなに俺達信用ならねぇのか?」
気がついたら口走っていた。思った事を感情に任せて強く奏多に当たる。
日向美と由梨は怯えた顔で、奏多は驚いたように、心配そうに俺を見る。
「どうしたんだーー、勇輝?」
心配をしてくれている奏多に対しても何故かムカついた。なんでこんなにイライラするんだろうか。自分でも分からない。このまま話したらこいつらに変に八つ当たりしてしまいそうだった。
「ーーっ、何でもない。」
俺はふいっと窓の方を向き、目を瞑る。
モヤモヤというか、イライラというか、とにかく落ち着かない。少し眠ろう。起きたら落ち着いているはずだ。
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