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1時間後
「ーーき、ゆうき。勇輝ってば!」
ガクガクと肩を揺らされて、目を覚まし、目に入るのは日向美の顔。
「なんだ、お前かよ。」
「なんだとは何よ!由梨が優しく起こしても起きないからでしょ。」
あれ程荒く揺さぶられて起こされたということはなかなか起きなかったのだろう。
「だ、大丈夫?勇輝くん。」
日向美の後ろに車の外で立っている由梨が心配そうに覗いているのが目に入る。心配している顔も可愛いな。
「誰かさんの起こし方のせいで少し頭がぐらぐらする事を除けば大丈夫だよ。」
「にやけてないで早く降りてよ。というか、私のせいみたいに言わないでよ、起きない方が悪いんでしょ!」
しまった、由梨の顔を見て自然に笑っていたみたいだ。こいつに指摘されるのだけは癇に障るな。
日向美が文句をギャーギャー言っているのをはいはいと軽く流して車から降り、奏多が居ない事に気づく。
「あれ、奏多は?お前が奏多に着いて行かない事も珍しいし。」
何処に行くにも奏多に着いて行く、と言っても過言では無いほど奏多にべったりな日向美がここに残っているということは、ーーついて来るなと言われた、そのぐらいだろう。
「っーー。」
少し顔を逸らして怒ってるとも悲しいとも寂しいとも取れるような複雑な表情をする日向美を見る限り正解だろう。
「き、きっと少し静かな所に行きたかったんだよ。疲れてそうだったしーー!」
下手をすればお前が居るのとうるさいとも取れる微妙なフォローを懸命に入れる由梨を見て曖昧な笑で日向美は顔を上げる。
「私なら大丈夫だよ、何とも思ってないから!」
へらっと笑い由梨の頭をぽんと撫でて心配をかけないようにする。少し由梨より背の高い日向美がそうしている姿はまるで姉妹のようだった。
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