3人が本棚に入れています
本棚に追加
人
~月城奏多~
正午、移動先にて
車から降り、軽く伸びをして後ろに振り返る。
「俺はちょっと一人で行きたいところがあるから、勇輝のことよろしくな」
由梨と日向美、二人にそう告げると日向美は少し不服そうな顔をしていたが、何も言ってはこなかった。
三人で行動しないほうがいいと判断したのはら勇輝は昔からイライラしたりする時は、少し距離を置くと機嫌が直ることが多いからだ。その上、今は由梨も居る。直ぐに冷静になれるはずだ。
日向美は一緒に来たそうだったが、一人のが効率よく回れる。それに、今は俺も少し一人になりたい気分だった。
少しだけ歩いていくと、
「ふぁ~…」
大きな欠伸が自然と出てきた。
欠伸をすると頭がぼーっとする。
それにしても、今日は上手く頭を働かすことが出来ない。やっぱり寝不足は良くないな。
そんな事を考えながら、周りを確認しつつ道を適当に歩いていると、前から二人の男が歩いてきた。
片方はネックウォーマーを鼻上まで上げていて顔はよく分からなかったが、身長も大きく、体つきも筋肉質だ。もう片方は少し小さく、メガネを掛けているこう言ってはなんだが胡散臭そうな中年男性だ。
メガネの男性はニッコリと目を細めて人懐っこそうな笑みをながら近ずいて来ると、俺の目の前で止まった。
数秒お互いに様子を見ていたが、俺が横から抜こうとすると、目の前に大きな男が立ちはだかった。
一歩下がりメガネの男性の方を少し睨み見ると、
「こんにちは」
と先程のにやけ顏から顔色一つ変えずにこちらを見ながら声を掛けてきた。
「どうも」
手短に返したが、何だか嫌な予感がした。
早くこの場を離れようと思い、横の大きな男性を見るが、目を合わせようとはせず、どこを見ているのか分からない目で空を見つめていた。
「こんな時に奇遇ですねぇ」
「はぁ…それでは」
生半可な返事をしてその場を去ろうとしたその時、
ぐらりと地面が歪んだ。
正確にはそんな風な感覚に襲われ地面に倒れ込んでしまった。
意識が薄れていく最中、俺の方に二人分の足が近づいてきて目の前でしゃがみこむと俺のことを担いで運び出した。
体に力が入らず、抵抗することもなく、意識は途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!