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~周 日向美~
「ふふっ、うん」
「それでさ~ーー。」
機嫌の良くなった勇輝、とその事に喜ぶ由梨。
仲睦まじく二人でお喋りしながら並んで歩くのを後ろからついて行く私。ん?一体今は何をしているんだ?シェルターを探しに来たはずだ。うん。
ここはどこだ?適当に2人が歩いていくのについて来てしまったからよくわからない場所に来てしまった。
ふと我に返りこのままでは駄目だと思い、咄嗟に二人に声をかける。
「ちょっ、ちょっと!」
「ん?」
由梨は直ぐに後ろを振り返り私に笑顔を向けてくれたが、勇輝は面倒くさそうに頭をかいていた。なんなんだ、その態度は。まあ、そんな事はいいんだが、迷子になっていては困る。
「今、何処にいるか分かってる?」
「えっと、そう言えば、ここどこだろう…?」
由梨が不安そうに周りを見渡すと、つられて勇輝と私も周りを見渡した。
先程までの綺麗な街並みとはかけ離れた寂れた道だった。周りには草が生い茂っていて、そのさらに遠くには延々と続く森。
草むらの中には人が住んでいるのかすら分からない家が所々建っていた。
「戻るか?」
「あ!」
勇輝が提案をしたとほとんど同時に由梨が大きな声を出した。
「どうしたの?」
「あそこ!」
由梨が指さした先には、森があった。よく見ると森の少し手前が丘になっていて、そこに鉄の両開きの扉のような物が見えた。
「扉…?」
「倉庫とかかな?もしかしたらシェルターにできるかも!」
「でも、誰かの所有物だろ?」
近ずいて見ると、扉にはたくさんの蔦が絡まっていて、随分と古いようだった。
「開けてみる…?」
三人で顔を見合わせ頷くと、息を呑みながら勇輝がドアノブに手を触れた。
「開いてる…」
勇輝が扉をゆっくりと押すと蔦がぶちぶちとちぎれて、錆びた扉がキーッと音を立てながらゆっくりと開いた。
中は暗闇だった。
「入るぞ…?」
勇輝が振り返り確認をすると、私達は頷いた。持ってきていた懐中電灯を付けてそっと中に入ると、埃とカビの混じったようなツンとした嫌な匂いが鼻を抜けた。
「随分と古いみたいね…」
「倉庫、なのかな?」
周りにはダンボールやら家具やらで散乱していたが、通れるほどの道は有り、ゆっくり進んで行くと、20メートル程先に壁に突き当たった。
「ここでいいんじゃねーの?」
勇輝が少し得意げに言うのは癇に障ったが、意見としては同意だった。
「そうだね!」
「まあ、いいんじゃない?」
私達が同意すると、勇輝は満足気に頷いた。
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