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驚いて自身の腕を見ると、力も入らない手で懸命に俺の腕を掴むおじさんの姿があった。
「待ってくれ…」
今にも消えそうな弱々しい声でゆっくりと言う。
「…が…ないのか…。」
何を喋っているのか分からないぐらい小さくボソボソとした声で囁いたが、何かを伝えようとしていることは分かった。
「なんと言っているんですか?今助けを呼ぶんで待っていてください…!」
「この状況が見えないのか?!もう、地球は、人類は終わりだ…。」
最後の力を振り絞りおじさんは弱々しくもはっきりとした声でそう言った。
何を言っているんだーー。
そう思いつつもあたりを見渡そうとゆっくり顔を上げた。
ーー思わず5秒ほど停止してしまった。いや、ありえない。脳がこの状況を整理しきれてない。こんな、こんな地獄があるものなのかと。
「みん…な?」
見渡す限りの道に人が倒れていた。
俺は慌てて立ち上がり一番近くに居た人に駆け寄る。
「大丈夫ですか?!」
そう言いながらこちらに体を向けようと引き寄せるとーー力なく体がこちらへ転がり顔が見える。
「ひっ…!」
もがき苦しんだような顔をして目を見開いたまま、
死んでいた。
俺は足が絡まり転けそうになりながらも隣の人の元へ行き確認する 。「し、しっかりしてーー」
2人目は泡を吹きながらしながら死んでいた。
「うぅ」
気分が悪くなってきたが、次の人へと足を運ぶ。
その後4人も5人も6人も何人も何人も何人も。
全員死んでいた。そこらじゅうに死体が転がっていた。
しばらく呆然としていたが、ふと振り返りおじさんに近付いて行く。
「おじさん…?どうしたの…」
口から泡を吹き、目は上を向き白目になっていた。
俺が確認している間ににきっともがき苦しみながら死んだのだろう。
「帰らなきゃ」
俺はおじさんをそっと置き、ふらふらとしながら立ち上がり家に向かった。
「さみぃなぁ…」
時間が経つ事に寒さが増していき、息も苦しくなっていく気がした。
歩けども歩けどもそこらじゅうに死体が転がっていて、窓から見える家の中にですら死体があった。
代わり映えしない景色と死体。
途方も無く長く感じた道もようやく終わりを迎え、倒れ込むように家に入る。
「はぁ…はぁ…」
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