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「嘘……晴仁くん、絶対嘘ついてるよ……。だってやっとまた付き合えたのに……。」
「ごめん、本当にごめん……。」
「旅館のために……結婚なんてしないって、私がいいってそう言ってくれたじゃない」
「気持ちが変わったんだ。今は……早く結菜さんとの結納を済ませたいと思ってる」
「結納って……。なんだったの……? 私たちの再会は……なんでまた付き合おうなんて言ったのよ!!」
沙織は泣きながら晴仁の胸を叩いた。その腕をそっと掴むと、もう一度ごめんとだけ呟いた。その場に崩れる沙織を見ながら、晴仁は入り口へと向かって歩いた。その目には涙が溜まっていた。
シャッターの開く音を聞きながら沙織は床に手をつき泣いた。
なんで……? なんでなの……なんでこうなっちゃうんだろう。私の何がいけなかったの? ついこの前のことなのに……これからはずっと一緒に居るって決めたのに……。
「どうして……うっ、うー。」
なんで私はフラれたんだろう。どうしてまた泣いているんだろう。またこんな思いをするのなら、なぜあの時私たちは再会したんだろう。
運命があるのなら、私たちは結ばれない運命なのかな。私たちが何をしたって言うのよ……。ただ好きなだけなのに……ただ隣に居たいだけなのに。
そんな簡単なことさえ叶わないなんて。私たちが結ばれない運命なら、なんで出逢ってしまったんだろう。この出逢いに何の意味があったんだろう。
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