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 こんな夢を見た。  大きな屋敷に通された。  どうやら近在の資産家の家、らしいが、いまは女主人とその家族が使用人とともに暮らしているのだという。刀自とその娘、更にそのこどもというそれなりの大家族だ。  なんで私がここに呼ばれたのかは分からないが、ただその先代当主である刀自の亡き夫の弟子らしき体格の良い使用人が私にこう零す。 「実はこの家には良くない噂がすぐに立つんですよ」  曰く、師匠である先代当主は殺されたとか。  或いは、娘の一人はモノノケに魅入られているだとか。  私は肯定も否定も出来ず、曖昧に頷くのみ。  その家の構造は随分と複雑怪奇で、一番奥の間に女主が眠るのだが、ふしぎな感じがしてならなかった。廊下で繋がっているようには見えなかったからである。  ただ、その屋敷の人は悪い人ではなかった。  だれかが誰かをそっと殺しているらしい以外は。    これ以上の記録はできない。  私の命が危うくなるからである。  それでは――
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