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「イリスが?それは知りませんでした。言われてみるとあの髪を洗うのは大変そうだな……」
「そうよ。髪を綺麗に保つって大変なことなの。男の人は意識しないでしょうけど」
艶のある黒髪を優しく撫でながらレムは言った。
「ちなみに調合の仕方は企業秘密よ。でも、あなたなら教えてあげようかしら?」
「え?い、いいえ……俺が聞いても仕方ないですから」
「そう?他の錬金術師なら大金を積んでも聞きたがることなのに」
いつもの事ながら意味ありげな事を言われてレイアスは閉口する。
「ああ、それと今回の依頼はもう一つ目的があるの。私の護衛よ」
「護衛……ですか?」
彼は少し違和感を持った。
錬金術師としても魔術師としても一流であるレムが護衛を頼む。よほど危険な場所へ行くのだろうかと。
「実はね……ああ、もう少しこちらへ寄ってくれる?内緒の話だから」
「こ、こうですか?」
「もっと近くに」
顔を近距離まで近づけるとレムから香水のようなものが漂い、レイアスの鼻腔をくすぐった。おまけにその妖艶な美貌が目の前にあると何らかの妖術にかかった気さえする。
「3日前の夜に私の店に誰かが忍び込んできたの」
「え?」
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