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「魔術で結界を張っていたからすぐに気づいたわ。その人は店の中を調べ回った後に何も取らず出て行ったのだけど、何かを探してる様子なのよ。しかもそれから毎日誰かがこの店を監視してるわ。今も店の前に男が立っているんだけど、たぶん誰かに雇われてると思う。あっ、見ちゃ駄目」
レムは振り向こうとするレイアスの顔に触れ、じっと自分を見つめさせた。
彼は緊張した面持ちで尋ねた。
「騎士団には通報したんですか?」
「いいえ。どうせなら自分で捕まえる方が早いと思ったの」
「自分で……まあ、レムさんらしいですね」
そこらの騎士よりよほど強い魔術師に彼は苦笑した。
「相手は何かを盗みたがっているみたいだけど、3日前の家捜しでは見つからなかった。じゃあ、私が街の外へ出かけたら犯人はどうすると思う?」
「留守の間に徹底的に店を探すのでは?」
「それが可能性の1つ。もう1つは私を捕まえて欲しいものの在り処を聞き出すこと。どうせだから店に強力な結界を張って外出してみるわ。そこであなたに同行をお願いしたいの」
「自分を囮にするんですね?相手の戦力が不明ですけど、俺一人で大丈夫ですか?」
「あまり数を増やすとむこうが警戒して襲ってこなくなるわ。しっかりした実力があって私が信用している人といえば貴方くらいでしょう?もう。あなたは私の心をすっかり盗んでしまったわね。3日前の泥棒よりずっと罪作りな人」
「ははは……」
またも意味ありげな事を言われ、レイアスはどんな表情をすればいいかわからなかった。
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