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変若水
惚れ薬、痩せ薬、心を読む薬、透明になる薬、嫌なことを忘れる薬。
様々な名札のついた霊薬の瓶がその錬金屋の棚には置かれている。店に来た者がそれらは本物なのかと尋ねると美しい女店主は決まってこう言う。
さあ、どうかしらね、と。
錬金術師レムは店にやってきたレイアスを笑顔で出迎えた。
「いらっしゃい」
「こんにちは。依頼があると聞いたんですが?」
「そうなの。レーテの実を採取するから手伝ってくれないかしら?」
「レーテの実?すみません。その素材はよく知らないんです」
レムは棚の一箇所を指した。
そこには豆ほどの大きさの木の実が瓶に数十個入っている。
「あの白い実よ。私以外はこれといって使い道がないから知らないのも当然ね」
「あれですか。何に使うのか聞いてもいいですか?」
「ふふふ」
彼女は妖しく笑った。
「女の嗜みに必要なものよ。整髪剤の材料になるの」
「整髪剤……ああ、シャンプーですね。へえ、あんなものが材料なんですか」
「あの実から取れる油が一番効き目があるとわかったの。髪の脂を落としつつ、皮膚を傷つけないバランスを保つのに苦労したわ。あなたのお友達もこれをご愛用して頂いてるの」
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