第一章 視点:鈴鳴涼樹

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「偽薬効果は、思い込みの強さによって威力が左右される! だから自爆上等のテロ活動は、上々の成果を上げていきやがった! ある時は自分自身を建物と同化することでその建物内にいた人間全てを飲み込み、ある時は複数人を一人の人間に集約して自我を崩壊、発狂死させたりとかなぁ! 他にも大気と同化して気候も変異させるクソや、山を陥没させ大地を盛隆させるクソ、昔の聖者様よろしく海を割断するクソ、クソクソクソのクソどものオンパレードだったんだってよぉ! だからこれは戦争(ウォー)ではなく、攻防(バトル)なんだ! あんなのは人間同士が行う戦いじゃねぇ! 感情を制御出来ねぇ、理性を失ったあいつらは俺たちと同じ人間じゃねぇんだっ! だからあのクソどもの子孫は、理性喪失体(ロスト・リーズン)は倒さなけりゃならねぇ、俺たち人間の敵なんだろうがよ! それを、テメェはっ!」  男の前蹴りが、自分の内蔵を破壊せんばかりの勢いで叩き込まれる。それをどうにか両手で防ぎながら、自分は無様に吹き飛ばされ、後方へと転げまわった。砂煙が立ち上る中、土塗れになっている自分に、尚も男の咆哮が浴びせられる。 「そのクソどもが押し寄せる『前線』で、理性喪失体を殺せなかっただとぉ? テメェ、いってぇどういう了見だ! ぶっ殺すぞ、スズ!」 「……相変わらずでありますな、レパード・レイラー教官」  咳き込みながらも、自分の体に異常が発生していない事を確認し、自分はゆっくりと体を起こした。  そして、自分を訓練学校卒業まで指導してくれていた教官に、視線を向ける。 「偽薬攻防が発生して以降、人間は感情を制御(コントロール)し、理性的に感情を表現することを美徳とするようになったのであります。その結果生まれたのが、偽薬制御棒でありますな」 「そぉだ! 偽薬制御棒は偽薬攻防発生時に新たに開発された、偽薬制御装置の追加装置。偽薬制御棒は人間の感情だけでなく、脳や体を効率的に制御するために使用され、更なる感情の抑制と制御を可能としたっ!」  教官の言葉に、自分は頷いた。
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