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それから一年が過ぎた。希望通り大学に入学。男子寮に入って禁欲生活を送っている。相変わらず青は嫌いだった。
いつかはこの青も、甘酸っぱい思い出として封印を解けるだろうか?
GWは帰らずにバイト三昧だ。新婚の二人の子作りの邪魔はしたくない。
いや、正直に言おう。俺が、ふたりの仲睦まじい様子を見たくないんだ。
GW初日。明日は完全オフの日だ。特に予定は無いけれど。夜勤明けの俺は、何となく少しだけ遠回りして帰ろうと歩き出した。いつも見慣れている道順を離れて歩いてみると、新たな発見があったりして結構楽しい。
「あれ? こんなところに公園なんてあったんだ?」
俺は思わず足を止めた。不意に、爽やかな翠の風が吹く。すがすがしい草の香りを運んだ。
「え?」
突如として、目の前にふわりと青い野球帽がふわりと舞う。無意識に受け止めた。深い青だ。まるで深海みたいに。
「ごめんなさい! 有難うございます」
水晶みたいに透き通った、綺麗な声が響いた。帽子の主のようだ。白桃みたいな肌に、小さな卵型の顔。大きな鳶色の瞳が快活そうにキラキラしている。さくらんぼみたいな桃色の唇が可愛らしい女子が立っていた。
『青の幻影』は自然に封印が解け、罪悪感が浄化されて『思い出の青』へと解き放たれた。
代わりに『歓喜の蒼』として確かな鼓動が胸の奥に根付いた。
~完~
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