青の幻影

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 思わず苦笑しちまった。人は恋をしたら詩人になるっていうけど、出会って瞬時でなるものなのか?  親父、心の中で一目惚れを馬鹿にしてた。あるんだな、こういうの。初めての恋。まさに青い恋の嵐だった。何故過去形かって? この場で俺はこの恋を封印するから。  これは「青の幻影」だ。くすぶって気持ちばかりが高温になる青い炎。これが分かり易いオレンジや赤色に染まらない内に、この「青の幻影」を封印しちまおう。二人には絶対にこの気持ちを悟らせてはいけない。俺が親父の、そしてこの(ひと)の足枷にならぬよう。 「紫音?」  親父は心配そうに俺を覗き込んでいる。真彩さんも不安そうに瑠璃色の瞳を潤ませる。俺はゆっくりと余裕の笑みを浮かべた。そしてこう言った。 「真彩さん、家の父を宜しくお願いします! その内、お継母(かあ)さんと呼ばせて頂きますね!」  蒼穹に、淡い黄色の陽光が眩しかった。父は照れたように俯き、彼女は歓喜の息を呑んだ。 青い風が、瞬時に通り抜けていった。
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