Act.4 君に捧げるこの気持ち

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   澄友は、泣いて謝る早織の弁解を聞きながら、喪失感で乾いてしまった心にその涙が染みてこないことに愕然としていた。  早織の、澄友を想うがあまりの気持ちが昂り、初恋の人の存在すら許せなかったのだと頭では理解できても、その愛する気持ちの強さを受け止めきれていなかった自分に、驚いていたからだった。 「ショックを覚えるのと同時に、私は愕然とした。嫉妬の裏にある、人の強い想いに初めて触れたからだ」 「…」  有理は口を真一文字に結び、澄友の話に耳を傾ける。  ずっと知りたかった、父親が失踪したその原因と理由。  それが今、自分の目の前で(つま)びらかにされて行く様を、固唾を飲んで見守り続けた。 「早織から向けられた、私の想像を上回る強い愛情。 自分以外の、誰をも退けなくては満たされないその愛を知るだけでなく、その強烈な情念に触れた私は──自分がそれほどまでに愛されるべき存在ではないと思う気持ちから臆病風に吹かれ…早織から、お前たち家族から…逃げた」 「……」  長い長い、独白のような澄友の一人語り。  聞く人によっては独り善がりで、さぞつまらない話だっただろう。 (──でも)  ずっと、ずっと長い間、有理はこの話を澄友の口から聞きたかった。  話してくれるのを、ずっと待っていた。  でも、待っているだけでは駄目だと思い、ずっとその姿を探し、求めていた。 .
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