Act.4 君に捧げるこの気持ち

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   有理が澄友と別れアパートに戻ると、そこに遥の姿はなかった。  多分画廊に帰ってしまったんだろうと思った有理は、それほどその身を案じることはなく、いつまた遥が戻ってきてもいいようにと部屋の中を片づけ過ごしていた。  …案の定、連絡先を交換した澄友から、千里の画廊で遥と会ったと聞かされ、安堵した。  遥の気持ちが落ち着けばまた会えるだろうと考えた有理が泰然と構える一方、千里の元を離れた澄友は、その足で早織に会いに行き、久方ぶりの対面を果たした。  ──しかし…  澄友と対面した早織の瞳にその姿が映り込んでも正気を取り戻すことはなく。  二人がかつての絆を取り戻すまでには、相当の時間と覚悟が必要だと、早織の担当医に言われたそうだが、 『贖罪の対価と思えば大したことではない』  と、早織のいる病院から電話をかけてきた澄友の声は明るく、幾ばくではない不安に揺れていた有理を安心させた。 .
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