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宛名に書かれてある自分の名前を見て不審がりながらも、差し出された手紙を遥が受け取ると、千里は微笑みだけ残して立ち去り、再びテラスは遥一人だけになる。
「…?」
千里から受け取った手紙を裏返し、差出人の名前を見た、瞬間。
(──!)
遥の胸が、高鳴った。
そこにあったのは…
暫く会ってもいなかった、愛しい人の名前、だった。
高田有理。 住所はなく、でも、名前を知れればそれだけで事足りた。
「…っ」
ハサミを取りに行くのも煩わしく、中の手紙を破ってしまわないよう気をつけながら、震える指先を動かし封を開ける。
中の手紙を取り出せるまで開封すると、何枚かに渡って綴られた手紙を眼前に掲げた遥は、貪るように有理の手紙を読んだ。
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