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───遥へ。
遥と最後に会った日以降、何気に忙しい日々が続き、気づけば冬が間近に迫っています。
一日、また一日と過ぎて行ってしまったけれど、その気になればそんな毎日の合間でも遥に会いに行けたのに、忙しなさを理由にして会いに行かなかった意気地無しの自分に、呆れてもいます。
君に好きだと告げてから…オレは随分、臆病になってしまったらしい。
そんなオレのことを、遥は、本気で好きになってくれた。
それが分かったからこそ、オレたちはあの日、抱き合えた。
でもオレは…あの夜遥を抱いたことを、後悔している。 遥は、どうかな。
オレは、遥が好きだ。 この気持ちに嘘偽りはないし、離れて暮らしていているからこそ遥のことが忘れられなくて、毎日君が今何をしているか考えない時間なんてないくらい、君に夢中だよ。
だから、それならそうだと言葉にして遥に伝えるべきだった。
強引なやり口で遥と体を重ねるんじゃなく、何度も好きって言ってくれた遥と同じように、素直な想いを口に出して言うべきだったんだ。
でも、オレは自分の中にある常識やモラルに心を囚われていて、こんなやり方は卑怯だって分かっていたのに、遥の恋心につけ込んででも君との強い繋がりを手に入れるため、君を…抱いた。
だからオレは、遥に自分の誠意を示せないまま抱き合ったことを後悔している。
遥としたことも、好きだと言ったことにも後悔はないけれど、遥に誠実じゃないことをしてしまったことを後悔しているんだ。
だから…オレから、遥に会いに行く勇気がなかった。
そんな罪の意識がオレにはあって、遥の前に立つのが、怖かった。
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