Act.4 君に捧げるこの気持ち

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   それでも。 オレはいつでも、遥に会いたかった。  一人になると、特にそう思ってた。  一人になると、君を思い出す。  それも、誠実じゃない行為だったとはいえ、遥と抱き合った記憶が何度も甦ってきて、  君の体の匂い、あの時見せた色っぽい君の顔や声を一人で過ごす時の合間に何度も思い出してしまって…正直、参ってるよ。  何気ない日常を遥と一緒に過ごした時のことを思い出すだけでも胸がときめいて切なくなるのに、誰にも見せない、オレにしか見せたことのない顔をして欲しがられたあの夜を思い出すと、堪らなくなって、今すぐにでも遥に会って、その顔を見て、声が聞きたくなった。  でも、できなくて…自分がどうしたいのか分からなくなったことだって、何度もあった。  会いたい。 だけどオレには遥に対する罪悪感があって、会いたい気持ちにストップをかけさせた。  だからどうしても、オレから、遥に会いには行けなかった。  でも、もし遥にオレと同じ気持ちがあったなら会いに来てくれるんじゃないかって、淡い期待をしてたんだ。  だけど、君は来ない。 来てくれなかった。  オレは変わらずこのアパートで暮らしながらあの塾で働いているのに、姿を見せてくれない。  それってつまり、遥はオレとは違うベクトルに乗って動き出していて、もうオレとのことは過去の出来事になってしまったってことなのかと考えると、手紙を書く手が震えてくるほど、怖くなるよ。  もしかしたらこの手紙も、読んでもらえないかもしれない。  そんな心配ばかりが胸を過るけれど、遥が好きだと想う気持ちを伝えたいから、最後まで書ききりたいと思います。 .
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