第2章(2-1)

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 大瓶を傾けて目分量で淹れるインスタントコーヒーにも、たぶん慣れた。紺のマグカップにはブラックで、熊のマグカップには砂糖と牛乳をたっぷり入れて。飲んだことがないからわからないけど、ブラックはどんな味なんだろう。  明け方のコーヒーのにおいが好きだ。  マルボロの重く燻るにおいと混じって、はじめはなんだか知らない土地の空気のように感じたけれど。今は、目を瞑れば、そのままうっとりと眠りに誘われてしまうくらいには心地いい。 「布団行け」  低くて、素っ気なくて、今は少し笑っている声。  薄目を開けてそろりと見ると、思ったより近くに横顔があって、慌ててまた閉じる。頬杖をつく精悍なラインは、まるで彫刻のよう。高い鼻梁の奥の少し落ち窪んだ目は、声よりずっと優しい。顎ひげの似合う顔立ちはどこかエキゾチックで、思わず見惚れてしまうほど。それは、目を閉じたくらいで消えるものではなくて。心臓がどきどきして、頬が熱くなる。  大きな手が頭に乗って、くしゃっと髪の毛をかき回す。 「風邪引くぞ」 「……うん」  空返事のままのぐずぐずするふりをしているのを、また喉の奥で笑って、ふーっと向こうへ煙を吐いたのがわかる。 「どうした?一緒に寝たいのか?」  こんなに離れがたいはずの炬燵から、今はすぐに出ていきたい。  焦って腰を浮かす日夏の頭を軽く小突いて、猫にでもそうするみたいに顎をくすぐるから、鼻声が出てしまった。 「んっ……」 「日夏?」     
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