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部屋は薄暗い。頭まで被っていた布団からそっと顔を出すと、まだ朝と言える時間だ。ひどく静かな朝。起きるには早すぎると思ったものの、音の正体が気になってすぐには目を閉じる気になれない。思い切って布団から出て窓を開けると、すぐに隣室の戸がガラリと開いた。
「あ。ごめんなさい、うるさくして」
「お前のせいじゃない。外の音だろ?」
「うん」
「屋根から雪が落ちたんだろうな」
「あ、そっか。雪……」
ぼんやり呟いて柵から首を伸ばすと、外の世界は真っ白で、きらきら光っていた。
「すごい……」
「遊んできてもいいぞ」
よほど嬉しそうな顔をしてしまったんだ。きっと揶揄の表情で笑っているのだろうと顔を上げると、でも、見下ろす視線は予想と少し違った。
「丈さん」
「ん?」
ほら、やっぱり。
丈の額に手を伸ばすと、彼は心地よさそうに、赤い目を細めた。
「どうした?」
「熱いです」
「ああ、うん」
「熱計りました?」
「いいよ、とりあえず寝とくから」
「だめです。あ、病院、かかりつけとかありますか?」
「大げさだな」
「だって」
はっとして、窓を閉める。雪かきのせいだろうか。いや、その前にくしゃみをしていたし、もっと前、寝起きにキスをした時にはもう熱かったかもしれない。
見上げる日夏の頭を、丈が軽く小突く。
「珍しく雪降ったら風邪引くとか、年だな、年」
「そんなの」
「とりあえず、寝る場所交換してくれ。お前は居間使え」
「あ、うん」
「元々、こっちが寝室だったんだが」
「……ごめんなさい」
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