2-15

4/5
前へ
/351ページ
次へ
 目が覚めると、薄暗い寝室にいた。  布団から腕を出して天井に伸ばすと、確かに自分の身体の感覚があり、現実の寒さに凍える。あんなにぐちゃぐちゃになったのに、今は寝巻を着て、きちんと敷いた布団に寝ている。  身体のあちこちに残る鈍い痛みが、あれが夢ではないと教えてくれる。  断片的に思い出す、はしたない自分の振る舞いとか、またぐしょぐしょにしてしまったシーツのこととか、担ぎ込まれた風呂場でも抱かれたこととか。  すぐ横にある大きな背中は、今、静かな寝息にかすかに動いている。  その背中にぴったりと寄り添い、再び目を閉じる。トクン、トクン、丈の心臓の音が頭蓋骨に響くと、腹の奥にまだ残る彼の生命の感触が、甘く疼くようだった。 「……まだ寝てろ」  低く唸るような擦れ声で言って、丈がごろりと寝返りを打つ。 「うん……」  ゆっくりと胸に抱き込まれ、その中で深呼吸をする。  何か気の利いたことを言いたかったのかもしれないけど、開いた口から出た息は、言葉になる前に寝息に変わってしまった。
/351ページ

最初のコメントを投稿しよう!

899人が本棚に入れています
本棚に追加