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目が覚めると、薄暗い寝室にいた。
布団から腕を出して天井に伸ばすと、確かに自分の身体の感覚があり、現実の寒さに凍える。あんなにぐちゃぐちゃになったのに、今は寝巻を着て、きちんと敷いた布団に寝ている。
身体のあちこちに残る鈍い痛みが、あれが夢ではないと教えてくれる。
断片的に思い出す、はしたない自分の振る舞いとか、またぐしょぐしょにしてしまったシーツのこととか、担ぎ込まれた風呂場でも抱かれたこととか。
すぐ横にある大きな背中は、今、静かな寝息にかすかに動いている。
その背中にぴったりと寄り添い、再び目を閉じる。トクン、トクン、丈の心臓の音が頭蓋骨に響くと、腹の奥にまだ残る彼の生命の感触が、甘く疼くようだった。
「……まだ寝てろ」
低く唸るような擦れ声で言って、丈がごろりと寝返りを打つ。
「うん……」
ゆっくりと胸に抱き込まれ、その中で深呼吸をする。
何か気の利いたことを言いたかったのかもしれないけど、開いた口から出た息は、言葉になる前に寝息に変わってしまった。
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