第1章

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第1章

 近年、「異常気象」と聞かない年はない。  季節外れの雪がちらついた春、毎日のように最高気温をたたき出しては記録を塗り替えていた夏。いつまで続くのだろうと辟易しているうちに、秋はいつ終わったのかそれとも来なかったのかだろうか、気がつけばあの猛暑は幻だったとでも言うように、深夜の冷え込み方はずいぶん冬らしくなっている。  十二月に入った途端に冷え込むのだから、四季もまた、人間と同じくカレンダーに追い立てられているのかもしれない。  もっとも、四季などという繊細な気候は必ずしもこの身体に馴染んだものではなく、異常と言われる程度に極端なくらいが肌に合うというのが本当のところだった。
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