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ゆく年くる年
はっと気が付くと、天井の豆電球と目が合う。
暗いオレンジの明かりが灯る、よく知った寝室だ。いつの間に寝てしまったんだろうと記憶をたぐると、ぼんやりと逞しい腕の感触と振動が蘇り、この状況に至るまでの経緯を思い出して意味もなく掛布団を頭まで引き上げる。
――たしか、たぶん。チューハイをコップ一杯呑んだだけで酔っぱらってしまい、呆れ顔の丈に担がれてここに寝かされたんだっけ。
そろりと顔を出し、襖の方を見ると、ほんの少し開いた隙間から明るい光と、その奥からテレビの音やくぐもった話し声が切れ切れに漏れ入ってくる。エディや朝倉もまだいるらしく、大晦日に客人を招いた家の気配とはこういうものなのかと奇妙にくすぐったく感じる。
(あ、この笑い声、丈さんだ)
慣れないけれど決して嫌ではないこの気配をずっと味わっていたいと思いかけて、大変なことに気付く。
今何時だろう、もしかしてもう年が明けてしまったんだろうか。
慌てて布団から出ると、温まった身体がぶるっと震える。
襖を開けた先の居間から、炬燵を中心にめいめいの姿勢で寛いでいた三人が、やはりめいめいの角度でこちらを振り向いた。
「あ、ひなっちゃん、おはよー」
リモコン片手のエディがにっこりと笑い、缶ビール片手の朝倉は無言で微笑みながら丈との間に日夏のスペースを開けてくれる。
「もうすぐカウントダウン始まるよ」
「あ……よかった。寝過ごしちゃったかと思って」
「それでそんな顔してたのか」
吸いさしの煙草を灰皿に置いた丈が、その大きな手で日夏の頭を軽く撫でる。
「だって」
「寝癖ひどいぞ」
反駁する日夏の頭をさらに揶揄うように二、三度撫でると、マルボロの煙いにおいのする手は離れていった。
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