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「お義兄さんがいるんだ? いいなぁ、私も一人息子でね。従兄弟が兄弟のように育ったんだけど、やはり家は別だからね、少し羨ましいよ。四人で晩餐を食べるのだろう?」
「いえ、私たちが顔を合わせるのは週に一度、伯爵に御目文字する時位でしたので……」
「えぇ?! 私ですら陛下と母上と食事をしていたのに……」
進んでいる国は違うなぁ、とシャイアは再度呟いた。
こうして話しかければ、ナタリアは意外と気さくに自身の話をしてくれた。
見かけは無表情に見えるが、シャイアの目には少しの表情の機微もよく見える。今は少しだけ打ち解けてくれているようだ。
結婚式の時には微かな緊張を、今は多少緩んだ頬をしている。目元が違う、顔色が違う、空気が違う、声色が違う。
シャイアは威厳のある王では無かったが、その代わりに素晴らしい物を持っているのだ。
それは、目だ。人を見る、物を見る、先を見る、国を見る、何事も彼の前では詳らかに見られてしまう。だが、ナタリアはそんな彼でも全貌が良く見えない。表面上の事ならば分かるが、内面までは見通せない。
これはシャイアには新鮮だった。だから、心から楽しんでナタリアとのお喋りに興じている。
「それじゃあ、ナタリアは家でどうやって過ごしていたんだい? 社交界に出ていたとか?」
「……、私は、その、このような女ですので……」
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