3人が本棚に入れています
本棚に追加
ナタリアが少し言い淀む。シャイアは笑顔で気付かない振りをして、先を促した。
「このようなって?」
「その……愛想が無い、のです」
「うん、でもその美貌なら引く手あまただったでしょう?」
シャイアは遠慮せずに肯定した。愛想が無いのはよく分かる。教育はされているから、これはもう、元から素養がゼロなのだろう。だから、それをナタリアに求める積りは、最初に顔を合わせた時から無い。
「確かに、絵姿を見て結婚を申し込む方はいらっしゃいましたが……顔を合わせると、つまらないようでして」
破談に、という事らしい。
「ナタリアはお喋りも上手なのになぁ。それは男の方に社交性が足りなかったんだよ」
「……」
流石に何とも言えず、ナタリアは沈黙で返した。
お喋りが上手、等とは親にも言われた事が無かった事だ。まして、親とお喋りをする余裕等ナタリアには無かった。
今迄話した事に嘘は無い。ただ、言っていない事は山程ある。そして、それを明かす気は無い。
シャイアはナタリアの返事を待つらしい。クッションを抱えて、視線で言葉を促される。
少し目を伏せてから、ナタリアはようやく口を開いた。
「……陛下は」
「シャイア」
すかさず訂正が入る。
「……シャイア様は、私の事をお慰めくださるんですのね」
最初のコメントを投稿しよう!