一章 四幕 いつもの日の始まり

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 ナタリアはさも今起きたかのように、侍女が扉の前に立ったタイミングで起き上がった。彼女たちがカーテンを開ける間にショールを羽織る。 「おはようございます、王妃様」 「おはようございます」 「洗面の用意を致しております。どうぞ」 「ありがとう」  この能面のような顔に向って、慎ましやかながらも笑顔で話しかけてくるこの侍女は、ナタリア付きになったローザだ。雀斑の散った顔は愛嬌に溢れていて、薄い金髪も相まってひまわりのようである。 「国王陛下は朝議に向かわれました。この後、午前は地方領主からの謁見、昼は諸侯と摂られまして、夕方には海洋諸島の方々とお会いになられます。王妃様にはその間、サロンの取り仕切りを頼むとおっしゃっていられました」  王や爵位を持った殿方にとっては仕事の時間だが、それに必ず付いてくるのが奥方というもの。  彼女たちの相手をしながら、さり気なく自国の評判を取り持っておく。これが王妃たるナタリアに割り振られた仕事である。 「分かりました。では、それに見合う服をお願い」 「畏まりました」  ローザは膝を折って応えると、衣装部屋の中へと消えていった。 (国王陛下は……シャイア様は、何をお考えなのでしょうか……) 「……という事でして、私の領地にもいくらかの兵と資金の程を……」     
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