3人が本棚に入れています
本棚に追加
王は朝議を終え、執務室で貴族それぞれと謁見していた。シャイアの後ろには、燻したような銀髪を後ろに撫でつけた、三十そこそこの男が立っている。その姿は軍属上がりを思わせる鍛え抜かれたもので、上背も高い。この国の宰相であるロダスだ。
今謁見しているのは、国境に程近い領地を持つ地方貴族、ランデュラ子爵。川沿いに大きな農地を持っているのだが、国境から百フェイ(約10キロメートル)は直轄地である。
だから、そんな所に最近山賊が出ているならば、目の前のシャイアの領地を通らなければ無理なのだ。
シャイアは終始ニコニコとして話を聞いていたが、ふむ、と一つ息を吐く。
(嘗められたものだなぁ、私も……)
この溜息も本当である。全く、嘗められている。侮られ、油断し、隙あらば食いつこうとされている。
(そんなに頼りなく見えるものかねぇ。若輩なのは本当だけれど……)
と、考えながらロダスを見ると、首を横に振る。そのような報告は上がっておりませんという事だ。
最初のコメントを投稿しよう!