一章 四幕 いつもの日の始まり

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「さて、ランデュラ子爵。おかしなことに、貴方の領地に向かう道すがら、そのような者が通ったという報告は上がっておりません。さすれば、これは私の部下が殺されたか脅されたかしているという事。そのような脅威ならば、戦支度も吝かではありませんが、いかがか」 「いっ、戦?! い、いえいえ、そんな、そんなことは……」  農地は今、かきいれ時である。そんなことに人を割かれ、農地を踏み荒らされては、田畑は駄目になり、作物も諦めるほかなくなってしまう。 「こ、こ、これは、私の方で今一度確認しておきます故……」 「えぇ、こちらからも人を遣ります。帰りも護衛させましょう。お気をつけて」  顔を青ざめさせながら、ランデュラ子爵は這う這うの体で退室していった。と、同時にシャイアは机へと倒れ伏す。 「ロダス、なぁこの茶番いつまで続けなければならないんだ?」 「陛下がお嫌ならば私が捌きますが、結婚のお祝いに来た方々を無碍にするのは隙を見せるも同じですよ」 「知ってる……、知ってるけど、お祝いじゃなくて詐欺ばっかりだよさっきから……」  もはや少しばかり子供のようになっているシャイアである。  ロダスはシャイアが十になる頃からの教育係であり、剣の師範でもある。それまでは軍属し、知将としての働きを見せ、王宮に召し上げられた。  最初は執事の真似事から入ったが、一応の礼儀作法を叩き込まれた後、徹底した政治教育を施され、シャイアの教育係となった。     
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