一章 五幕 当たり前ではない王妃

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一章 五幕 当たり前ではない王妃

「本日はいかがお過ごしでしたか」  シャイアがそう尋ねると、ナタリアは食器を置いて口を開いた。 「シャイア様のご指示通り、サロンにて諸侯の奥方様のお相手をしておりました。皆様羽振りのよろしい方ばかりでしたが、使節の方の奥様とミリス候は少しばかり体を患っておいでのようです。滋養強壮の薬草をお譲りいたしました」  申し遅れたことお詫び申し上げます、とナタリアは丁寧に続けると頭を下げる。昨日のように空のテーブルではなく料理があるため、そこまで深く頭を下げなかったが、シャイアはそれをまた慌てて辞めさせる。 「なんで謝るんだい? ありがとう。いい事をすると返ってくるというしね」  屈託なくシャイアが笑うと、ナタリアも一つ頷いて食事に戻った。  会話を楽しみながら食事をするのは行儀の悪い事では無い。口に物が入ったまま喋るのはマナー違反だが、雑談でいちいち手を止めてしまえば料理が冷める。 「そう言っていただけると助かります」 「ナタリアは嘗められたりはしていないかな?」  はて、と首を傾げるナタリアである。この国の頂点である王……ひいては王妃を、嘗める、とは。分からない事は素直に聞いてみた。     
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