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「どういう意味でございましょう……?」
「いやぁね、私は随分と嘗められていてねぇ。今日で大分と減ったとは思うのだけれど……統治を初めて一年。まだまだ至らないんだろうね」
この王を嘗めるとは、また随分と見る目の無い貴族諸侯だ、とナタリアは心の中で断言した。
確かに見た目には強そうに見えない。王族独特の威厳も無い。地位の高いものにありそうな、偉ぶった所も見受けられない。
しかし、少しでも話せばわかりそうなものだ。
こんなに心を開いておきながら、ここまで油断できない御仁はそう居ない、と。
「……輿入れする際、お国を拝見して参りましたが」
ナタリアは下手に慰めるよりも、と口を開いた。
「うん。長閑でしょう?」
「はい。治水も行き届き、民草は笑いながら仕事にあたり、街は警吏が行き届き、大変よく治められていらっしゃると拝見いたしました」
ソロイア帝国からヴァベラニア王国の首都、ブランデまでの道すがら、争いらしい争いも、ちょっとした小競り合いも見受けられない。確かに長閑ではあるが、それにはよく目が行き届いている証拠だ。また、税が重ければあのような様子にはならない。
国土だけではない。人も皆、長閑なのだ。
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