一章 五幕 当たり前ではない王妃

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 晩餐の後にまだ食べるというならば、麦粥でも作っておこう。香草とチーズを使った、少し甘い麦粥だ。 「じゃあ、頑張って仕事するよ。その為にもしっかり食べて、しっかり働いて、お腹を空かせておかなきゃあね」 「働きすぎにはお気をつけくださいませ」 「ナタリアに言われたらそうしなきゃだ」 「まぁ……、言われなくてもお気をつけくださいあそばせ」 「はいはい」  こうして国王夫妻の夜は恙なく更けていった。  翌日は使節の方々の見送りという事で、ナタリアを連れてシャイアは彼方此方のサロンを往来していた。  海洋諸国と砂漠向こうの国からの使節、ソロイア帝国、合わせて十二の国々から、わざわざ国の代表としてお祝いに来ていただいたのだ。シャイア自らが赴いて礼を尽くすのが当然だろう。  また、贈られた物への返礼の品もこの時に渡す。それらの支度に一週間という時間を要したのだ。  一つのサロンで使節を見送ると、廊下に出た途端シャイアは大股に歩きながら老齢の執事に確認する。 「次は?」 「テネオス国、エラード使節です」 「贈り物は南国の色鮮やかな反物で御座いました。返礼には宝飾品を造らせて御座います」  然して大股にも、急ぎ足にも見えない様子でシャイアたちについていくナタリアが補足する。     
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