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例えば今回の事にしてみれば、反物を贈られたという事はテネオス国の一番の売り物は反物なのだ。繊維を染める染料にも、布を織る糸にしても、原料は植物である。植物が盛んな国という事は、余程大きな……それこそ、ヴァベラニア王国のような……国土が無ければ宝石や金属の産出はまず無い。原料の植物が生えない土地を作るようなことはしないからだ。また、反物で寄越したというが、それの加工技術がどれほどの物なのかをナタリアはサロンでのもてなしで見抜いていた。布の加工技術は、他国に見劣りしない程度。しかし、宝飾品はどこかセンスが違うようである。つまりは、宝飾品は交易で手に入れる物なのだろう。だからテネオス国の服飾に合った宝飾品を造って贈る……それを返礼とするのは最上級のもてなしである。
(確かに、贈り物には目を通しておいてねとは言ったけど……)
先導するシャイアの口元は自然に笑っていた。
(いやぁ、私は予想以上に素晴らしい奥方を頂いたようだ)
そうしてサロンに付くと、侍女が返礼品の一つを乗せた天鵞絨の台を持って待っている。自国では使わない大ぶりな装飾品だが、確かにエラード使節の奥方の服装を思い出せばよく似合うだろう。
後ろにはそれらが複数入った葛籠も用意されている。
「エラード様、失礼致します」
シャイアは迷いなくサロンの扉を開いた。
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