一章 六幕 図書室

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 だからこそシャイアは警戒して斥候を出しているのだが、警吏を増やしても兵を配備してみても、どうもその抜け穴を狙われているという事だった。 「手引きの者がおりますね」  そこまで聞けば、ナタリアにも理解できる。だから、シャイアが悩んでいるのはそれ以上の問題なのだろう。 「あぁ。しかし、内部からの手引きと見るには範囲が広すぎる」  山賊が現れる場所は西の領地の広域に渡っている。北西に出たと思ったら、次は南南西。その次は真西といった具合に、兵の手薄な場所、対応が追い付いていない所を的確に狙っている。 「胸糞の悪い話になってしまうが、村の女性にも被害が出ている。早急に手を打ちたいが……勉強不足だろうかね。対応がまだ追いつかない」 「そんな事おっしゃるものではございませんわ、シャイア様」  ナタリアが励ましても、シャイアは大きなため息を吐いて行儀悪く頬杖をつく。まるで子供のようだ、と思ったのは、ナタリアだけでは無いだろうが、そこは誰も口を出さない。  姿勢だけは子供のようだが、誰も居ない壁を見る目はどこか遠くに突き刺さるような鋭さだ。 「しかしねぇ、私がしっかりとしていれば良いのだけど……現状はこれ以上の打つ手が無い。警備の兵も出し過ぎれば王都の守りが薄くなる」     
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