一章 六幕 図書室

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「今はもう少し様子を見ましょう。……もちろん、私も女です。女性に手を出す賊など早く捕らえて、襲われた女性以上の屈辱を味わって欲しいと思いますが……」 「ぶっは、ちょ、ちょっと待って過激だね? いや、私も同じ意見だけども」  ナタリアは無表情のまま淡々と言い放ったが、その意見にシャイアは思わず吹き出してしまった。  そもそも、危ないから外には出ないでね、というつもりで話し始めたが、ナタリアの視点の鋭さ、言葉の的確さは政治家のそれだ。女性ならば顔を顰めて「早くなんとかしてくださいませ」と言うに留めるものだろう。シャイアは今更ながら、軍議さながらの意見交換ができるナタリアが面白くなっていた。 「虚勢して雑居牢に入れる位で丁度いいでしょう」  何がそんなに面白いのか分からないナタリアは平然と続ける。シャイアは机に突っ伏さないのが精いっぱいの様子で肩を震わせていた。 「ふっ……、く、くく、うん、いや全くその通りだ」 (困った、本当、この奥方は面白い……)  本来ならば賊という言葉ですら貴婦人は忌み嫌うものだ。晩餐と王を残して退室してしまっても不思議ではない。ナタリアは普通のご婦人とは違う、とは思っていたが、いやまたここまでとは、とシャイアは見解を改めた。 「そういえば、シャイア様。私、図書室に行きたいのですが」     
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